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- Vol.2 シールアートキット
鮮やかな色合いの丸いシール(カラーラベル)。地図にマークをしたり、グラフに使ったりと、さまざまな用途に使われている商品です。これを、アートを楽しむ商品として生まれ変わらせたのが「シールアートキット」。「ラベルの楽しさを広げる」という、エーワンのブランド戦略を背負って誕生しました。
1枚では何の変哲もないシール。ところがそれが無数に集まり、ときには重なり、ときには規則的に整列し…。すると、なんとも不思議なアート作品になる。シールアーティスト飯田クラウス太郎氏による、その名も「シールアート」です。その作品に熊田が出会ったのは、営業企画課に籍を置いていた頃でした。
「事務用品だと思い込んでいたシールが、どこからどう見てもアートになっている。このことに驚き、強い衝撃を受けました。同時に、エーワンの商品でこんなにも楽しめることを、より多くの方に伝えたくなりました」
飯田氏に話を聞いたところ、「絵を描くのは難しいと感じる人も、シールなら貼るだけで絵を描き出せる。誰もが簡単に楽しめるのがシールアートの魅力」とのこと。この言葉に、熊田は商品化への想いをさらに強めました。
熊田の着想には、経営陣も注目していました。エーワンは、ラベル専門メーカーとして機能性や品質にこだわり、多くの支持を得てきました。しかしリーディングカンパニーとして、その地位に安住することなく、さらなる価値の提案は責務です。そのための方策の1つが、ラベルの楽しさを広げること。事務用品としての枠を超えたシールアートは、まさにその可能性を秘めていたのです。熊田の想いはエーワンの想いとなり、プロジェクトは動き出しました。
シールと楽しさという2つのキーワードで熊田が最初に思い浮かべたのが、子どもたち。子どもは元来シール好きです。それならばと、既存の子ども向けシール商品をリサーチしてみました。結果は…。
「知育玩具としての商品が主流でした。このジャンルでは、あらかじめ決められた場所に決められたシールを貼ることで、脳や手先の発育を促そうという考えが起点にあります。でもそれは、私が思い描いたシールアートの魅力とはなんだか違う。自由自在に自分なりの世界を描き出せることこそ、シールアートでみんなに伝えたかったことなんです」
熊田のリサーチは続きます。今度は、子どもを持つ社員の協力を得て、親子でシールアートにチャレンジしてもらいました。「子どもはまだしも、頭の固い大人が自由なアートなどできる?」という声もあったものの、実際には「親も子も、意外とできる」ということが判明。これにより、メインの購入層は大人、1人で楽しんでも親子で楽しんでもOKというコンセプトが固まりました。
シールアートキットは、商品名が表わすとおり、12色のカラーラベル(シール)と、作品を描くキャンパスに相当する台紙5枚からなるキットです。ここで意見が分かれたのが、見本どおりの作品を作ることを目的とするのか、「何を作ってもいい」とするのかという、商品の位置づけ。具体的には、シールの貼り付け位置をあらかじめ台紙に書いておくのかどうかです。賛否両論ある中、ここで熊田がこだわりを貫きました。
「お客様が創造力を駆使し、自由に楽しんでこそのシールアート。貼り付け位置は決めないことで説得しました。代わりに、飯田氏の代表的な技法や作品を紹介したりして、『こんなことができるんだ』という創作の手がかりにしてもらうことにしました」

市場創出型の商品だけに、あらゆることが初体験だったのもシールアートキットの特徴。通常は同じサイズのラベルで構成される1枚のシートは、今回、30mmから5mmまでの異なるサイズのラベルで構成しました。商品の説明書は、いわゆる「マニュアル」風の見栄えではなく、ビジュアル中心のアート色あふれる説明書にしました。特に苦労したのは、販路の確保です。事務用品という枠組みを超える商品だけに、営業担当者も既存の文具店に勧めるには不安があります。そこで、工作用品を多く扱う販売店に的を絞り、店頭に並べてもらうことにしました。
「誰も経験のないことだから、何が正解なのか誰もわからない。でも、私にとっても初めて企画した商品。そもそも、私の中に正解や不正解の基準がありませんでした。だから、『みんなにシールアートを楽しんでもらうには?』という判断基準で走り抜けたんです」
こうして迎えた2008年9月、エーワンの未来を占う商品である「シールアートキット」が発売されました。女性がメインユーザーになるだろうと予想していたのですが、発売してみると、意外にも男性購入者が多いことが判明。また、「学校でカラーラベルをシールアートキットのように使っています」という声も届きました。お客様に使い方を大きく委ねた商品だけに、開発者も想像しなかった層に楽しみが浸透しつつあるのです。開発にあたって監修を依頼した飯田氏とは販売面でも連携を深め、展覧会など、シールアートが紹介される場に来場された方にも購入いただけるようにしています。今後は、イベント来場者がみんなで作り上げるアート作品など、シールアートの認知度向上とファン拡大に向けた新たな手法も考えています。
「エーワンの商品は、なくて困るわけはないけど、あればやっぱり便利で役立つものがほとんど。そこに、『使って楽しい』商品も足していきたい。初めての商品企画でたまたま出会ったテーマですが、これからもずっと取り組んでいきたいです」


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